建築物探訪ブログ

旅行先で訪れた著名な建築物を紹介するブログです。

相馬中村神社

相馬に住む友人に相馬を案内してもらっている最中、是非一度行ってみたいということで、連れてきてもらったのがこの相馬中村神社。この神社を目指す道すがら中村城址公園にて運動会をやっている様子が見えました。流れてくる陽気な音楽や子供達の歓声を横目に友人との思い出話を弾ませながら参道を進みます。

 

この神社の概要を説明すると、まず、この相馬市、かつての中村藩を治めていた相馬氏の先祖の平将門が下総の国浦島群に戦勝を祈願して承平年間(931~937)に建てられた妙見社が始まりとされています。時は移り変わり、慶長16年(1611)に現在の相馬中村城跡に城を移した際に妙見社もこの中村城内に移され、現在の相馬中村神社となりました。また、現在の社殿は寛永20年(1643)、18代藩主相馬義胤によって建立されたものとなっております。

 

この神社は相馬野馬追の舞台になるため、あちらこちらに「馬」が見られます。参道を歩いてくると、私たちを出迎えてくれるのは、狛犬ではなく、馬。さらに境内に歩みを進めるとそこにはポニーが飼育されています。

 

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愛らしいポニーに挨拶し、目指すのは木立から垣間見える相馬中村神社の社殿。階段を上ると目の前には拝殿が現れます。この神社の構成を大まかに説明すると、私たちが参拝をする「拝殿」、神のいる建物となる「本殿」、本殿と拝殿をつなぐ役割を持つ「幣殿」があります。

 

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拝殿

拝殿で参拝を済ませ、建物の裏手に回り込むと、幣殿と本殿が見えてきます。写真を見ると、本殿の屋根が流れるように前方向へ長く伸びているのがわかります。本殿のこのような形式を「流造」と呼び、代表的な例として、京都の上賀茂、下鴨神社が挙げられます。

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拝殿

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幣殿と本殿


本殿の柱の上にある木が複雑に組み合うこれらは組物と呼ばれます。柱の上の方形の部材を大斗、その上の下の2つの角が曲線となった船のような細長い部材を肘木、さらに上の小さな方形の斗(巻斗)を3つ並べたものを平三斗と言います。しかし、この本殿では、平三斗のさらに前方にもう一つ平三斗が組まれています。この形式を「出組」と呼びます。さらにその上の部材が三角形に組まれ、中央に束が立てられた形は猪子扠首(いのこさす)と呼びます。出三斗は周囲を黒く縁取られ、くっきりと浮かび上がり、軒下を賑やかに彩ります。

 

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この社殿と同年代の建物には日光東照宮大崎八幡宮がありますが、これらの豪華絢爛なものと比べると非常に素朴な建物に感ぜられます。しかし、要所に施される漆塗、金金具、極彩色の装飾は、木の薄板を葺いた杮葺や素木の風合いと相俟って、互いの輪郭を際立たせ、力強さを与えているように思えました。

 

社殿が建立した寛永時代の正統な形式であること、この地方を代表し、指標的な位置を有していることから昭和58年、拝殿、幣殿、本殿は国指定の重要文化財に指定されています。

 

所在地:福島県相馬市中村字北町140

重文指定年月日:1983年01月07日