菅野美術館
宮城県塩釜市、東北本線塩釜駅を降り、目的の菅野美術館へと向かいます。坂を登り、住宅街を抜けるのですが、あまりに感性な住宅街、この先に本当に美術館があるのかと不安になりますが、駅から歩くこと十数分、町を見下ろす傾斜地に建つ菅野美術館にたどり着きます。
私たちを迎え入れるのは、茶褐色のコールテン鋼によって覆われたブロック、表面にはエンボス加工によって模様が作り出されています。三角形や縦長の平行四辺形の窓、雨樋や入り口の雨樋と非常に抽象的な形態となっています。
駐車場奥の階段を上った先が美術館の入れ口となっております。ちょうどここから、ブロックがナイフで切り取られたように窓が開けられています。
菅野美術館は宮城県出身の建築家、阿部仁史氏による設計です。ロダンの彫刻など8つの彫刻を展示するために計画されました。通常の展示空間のような様々な企画、展示に対応できるホワイトキューブのような空間ではなく、作品との相乗効果が期待される、建築空間自体が展示そのものとなる、そのようにデザインされました。
館内に入ると外観の茶褐色の姿から一転、真っ白な空間へと変転します。内部でもこのエンボス加工が施された凹凸の鉄板が使用され、エンボス加工の突起物同士を合わせて厚さ3.2mmの鉄板を接合させたサンドイッチパネルで床や壁を構成しています。設計者の阿部氏によると「薄い鉄板でつくられたそれぞれのセルが集合することにより、互いに支え合って全体を構成するスチール製のシャボン玉の集合のような構造」と述べています。
展示空間はスキップフロアとなっており、階下に向けて螺旋を描くように進みます。その中で壁は種々の多角形の形となりながら、我々に覆いかぶさるように、斜面を形成するように斜めの壁面として取り囲み、空間の一部が切り取られ、さらに奥の空間へと我々を誘います。なるほど三角形や縦長の平行四辺形の窓はこの内部のシャボン玉を充填したような空間と呼応し、光を内部に導いているのだとわかります。
このエンボス加工されたパターンの反復はブロック玩具の接合部の凹凸を思い起こさせるようでしたが、一方何か巨大生物の体内に迷い込んで行く、そんな感覚がしたのでした。