建築物探訪ブログ

旅行先で訪れた著名な建築物を紹介するブログです。

東京国立近代美術館~古きを支える~

東京メトロ東西線竹橋駅を下車後、北桔橋門方面へ進み、左手に皇居の緑や石垣を眺めながら、緩やかな坂道を登ると目的地、東京国立近代美術館となります。

 

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東京国立近代美術館は、裏手には首都高の高架橋が通っていますが、前面には皇居が広がり、雑多な環境ながらお濠に石垣と豊かな景観を有しています。1969年、ブリジストン創業者の石橋正二氏の寄付によって建築された美術館で設計は谷口吉郎氏となっています。

 

美術館入口の前面にはちょっとした広場となっており、谷口吉郎氏は「街角の小公園」と呼んで、都市へと解放された空間となっています。(訪れた時は企画展、「窓展」が開催されており、建築家、藤本壮介氏の作品が展示されいました。)また、敷地が傾斜地ということがあり、この前面広場も高低差を利用し2層となっており、2層目には、イサム・ノグチ氏による彫刻や皇居を臨むレストランがあり、美術館の利用者以外にもその恵まれた地勢を持つ空間を体感できる構造を有しています。

 

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美術館のファサードは、柱によって建物を持ち上げるピロティとその柱によってつくられる列柱空間が特徴的となっています。3階より上層階は柱によって持ち上げられ、2階はデッキとなっており、上層階を受け止める受け皿のように感じられます。

 

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エントランスは列柱空間に加え、船の竜骨のようなゆったりとしたアーチを持つ連続した梁が空間を強く印象付けます。 梁の連続したアーチは視覚的にリズムを与えます。

 

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東京国立近代美術館は2002年坂倉建築研究所の設計で改修工事が行われました。下の写真、建物の外側に取り付く部分、新築棟が裏手に回り込むように、「L字型」に建築されています。これにより、既存のファサードに影響をあまり及ぼすことなく改修が行われました。

 

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また、改修工事を行うにあたり、この建物を現行の耐震基準に合わせる必要がありました。このようなピロティを持つ建物は柱がやはり弱点となります。そこに補強としてブレースや補強壁、柱に鉄板などを巻くとなるとファサードのデザインに大きな影響を与える必要があります。この問題に同様のピロティを持つ国立西洋美術館では免震構造を採用することによって問題を解決しています。しかし、東京国立近代美術館は、すぐ裏手には首都高の高架橋が迫り、工期も限られているといったことから、免震構造の採用は見送りとなります。そこで、「L字型」の新築棟と既存の建物を一体構造とすることで新築棟が地震力の70%を負担するといった形によって解決しています。

 

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しかし、この補強によって、スキップフロアによる展示室という特徴的な空間構成は鋼鉄により補強された床スラブをかける形式への変更が余儀なくされました。やはり、この変更は苦渋の決断だったようです。

 

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