建築物探訪ブログ

旅行先で訪れた著名な建築物を紹介するブログです。

愛知県立芸術大学

柱によって持ち上げられ、飛行艇のような水平に伸びたフォルムでその建物は丘陵地の上で木立から身を乗り出すように建っている…一度見たその写真が忘れられず、なんとか時間をつくって目的の場所へ。

 

f:id:Yuki-1013:20191225003135j:plain

 

そこは愛知県立芸術大学名古屋市の東、長久手市の丘陵地に建設されています。

設計は吉村順三、竣工は1971年と間も無く50年が経とうとしています。

 

リニモと呼ばれる乗り物に乗り、芸大前駅で下車、芸大に向かう導入路を登っていくと、浮かんだような、のびやかな建物が見えてきます。この建物は、講義棟で愛知県立芸術大学のランドマークとして、強く印象付けてきます。妻の壁画は片岡球子氏によって描かれたもので、その豪快な画風は端正な講義棟の姿と相まって強烈な印象を与えます。

 

f:id:Yuki-1013:20191225003430j:plain

f:id:Yuki-1013:20191225004547j:plain

 

この講義棟は、110メートルの長い建物であり、1階はピロティ、2階は廊下に付属室、そしてPSコンクリート竪型ルーバーに覆われた3階が講義室となっています。廊下が講義室にぶら下がる形になるため、片廊下型の教室のように教室を出ると廊下がある、という風ではなく、階段を介することになり、講義室と廊下の間にワンクッション、新たな空間が発生します。ここでは、先生と生徒との接触の場になることが期待されています。

 

f:id:Yuki-1013:20191225003714j:plain

f:id:Yuki-1013:20191225003606j:plain

f:id:Yuki-1013:20191225003956j:plain

f:id:Yuki-1013:20191225004112j:plain

f:id:Yuki-1013:20191225004220j:plain

 

このキャンパスでは、講義棟、美術学部棟、音楽学部棟などそれぞれの機能を持つ建物を分棟させて配置しています。その配置もその土地の丘陵地という特徴に対処し、等高線に沿って建物を巧みに、無理のないように行われています。

 

f:id:Yuki-1013:20191225004624j:plain

大学本部

f:id:Yuki-1013:20191225004812j:plain

図書館

f:id:Yuki-1013:20191225004936j:plain

学生ホール


また、110メートルの線状の長い講義棟は、キャンパスの軸線を強く描き出します。その軸線に直交する美術学部棟、音楽学部棟を結ぶ渡り廊下の軸線がぶつかり、その中間地帯の中央広場の南側には図書館や学生ホールなどが配置されています。まずこのキャンパス内に入ると中央広場の様子を伺え、中央広場からは対面する美術学部棟、音楽学部棟をうかがえるという明確な構図となっており、人の動きや自らの位置を容易に把握することができます。講義棟は、軸線を描くことでこのキャンパスの骨格をなし、建物に、そして我々に秩序が与えられるように感じられるのです。

 

f:id:Yuki-1013:20191225005054j:plain

中央広場から東、奏楽堂を眺める

f:id:Yuki-1013:20191225005241j:plain

中央広場から東、渡り廊下を通して音楽学部棟を眺める

f:id:Yuki-1013:20191225005541j:plain

展示棟

f:id:Yuki-1013:20191225005740j:plain

f:id:Yuki-1013:20191225005803j:plain


自然のままではなく、かといって自然の姿を隠すほどの建築があるというわけでもなくといった微妙なデザインによって自然と同化した素晴らしい景観が出来上がっており、吉村氏の自然への対応力の高さが感じられます。