建築物探訪ブログ

旅行先で訪れた著名な建築物を紹介するブログです。

パレスサイドビル ~オフィスビルの嚆矢~

東京メトロ東西線を降り、地上へ出ようとするとプレキャストコンクリートパネルの白い円筒がそびえ立ちます。

 

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今回の目的地はこのパレスサイドビル

設計は日建設計、竣工は1966年とすでに築50年が経過しています。

地上9階、地下6階、毎日新聞社をはじめとする三社の出社によって計画されました。

 

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皇居の濠に面するこのビルは、高さ50メートルの2つの円筒コア、長さ200メートルのビルからなっています。この円筒コアにはエレベーター等縦動線機能が集約されており、この2つのコアをつなぐビル内部の水平動線というように機能的にも視覚的にも単純明快に秩序立てられています。

 

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このビルに入ってまず最初に気づくことが、地表のグラウンドレベルと1階のレベルが異なることです。下の写真は建物正面のエントランスとなるのですが、中央には上へ登る大階段、両脇には降る階段となっています。

 

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このビルが建つ東京都は火山灰の堆積による地盤で岩石による強固な地盤は20メートル掘り下げた部分となります。建物を支える地盤は地表土ではなく、地下20メートルの地盤に据えられるということです。さらに将来、周辺のさらなる開発により、高架道路によるアプローチなどによって空中から人員、物資、エネルギーが移動することになると地表はあまり意味をなさないものとなる、そこから、建物は地下から立ち上がるものとして考え、地表との間に空濠を設けて建物と絶縁し、1階床を高くあげて地下1階を地表と大差ないようにした、と設計者の一人、林昌二は述べています。そのため、アプローチのできる出入り口は限られて来るため、建物内のコンコースの独立性が高まるように感じられます。

 

建物の外側を見るとルーバーの役割を果たす金物が見られます。この方立取付金物や方立や楣には全て市販品の鋼材が用いられているとのことです。鉄骨メーカーがそのまま躯体に取り付けを行えるようなディティールの設計。細部にはこだわらない荒さを感じますが、それをビル全体でまとめあげるとなると話は変わり、視覚的には精巧さを感じさせます。

 

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漏斗型の部材は雨樋。独特な姿は外観を印象付けます。

 

正面エントランスは壁や床には大理石し、滑らかに削り出された手すりが印象的です。

西玄関のエントランスはからかさ状の庇となっています。

 

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中に入ってみるとコンコースがあり、両脇には飲食店が連なります。1階と地下1階は吹き抜けによって繋がり、幅自体も余裕を持って設計されており、非常に落ち着いた雰囲気。また、両階をつなぐ階段は彫刻的繊細さを持ち、場を引き締めます。「夢の階段」と呼ばれるこの階段は、ネット状に組んだステンレス線の交点で段板を支えているとのこと。

 

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建物の両端には設備シャフトが取り付きます。外壁は茶褐色の煉瓦となっており、その数は約60万個。アルミニウムルーバーとの対比が重厚と精緻の感覚を与えます。

 

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築50年を超えても色あせることなくそこに立ち続けるパレスサイドビル 。これからもそこに立ち続け、目まぐるしく変わり続ける東京の町を見守り続けることを願っています。

 

受賞等

『日本の近代建築20選』選定

『BELCA賞ロングライフビル部門』

『空調衛生工学会賞』

『DOCOMOMO Japan 日本におけるモダン・ムーブメントの建築』など