建築物探訪ブログ

旅行先で訪れた著名な建築物を紹介するブログです。

睦沢学校

 甲府駅北口を出ると何やらインベントがやっているらしく、ステージ上のフラダンスを横目に広場の隅に建つ建物へ。

 そこには和とも洋とも取れる不思議な建物が。

 

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 この建物は明治8年(1875)に現在の甲斐市亀沢(旧睦沢村)に建てられた睦沢学校で、甲府市藤村記念館として甲府駅北口に移築されたものです。

 

 この建築の様式は擬洋風建築と呼ばれ、日本の伝統的な建築技術を基盤に西洋風の姿を作り出そうとした建築形式です。当時の日本は、開国して間も無く、学校を通した正規の建築教育を受けた日本人は1879年まで一人もおらず、西洋建築にも不習熟でした。その中で官庁営繕などを行う工部省の林忠恕は横浜で外国人建築家に西洋建築を学び、西洋建築を参考にした「林忠恕式」と呼ばれる形式を生み出し、官庁建築、学校建築においての手本となりました。しかし、各校のデザインに関してはそれぞれの学校を請け負った大工棟梁に依るところが大きく、しっくい壁や蔵に見られるなまこ壁、社寺建築の装飾を用いるといった伝統日本建築のものとなっています。実際にここ睦沢学校では、江戸時代より名の知れた下山大工の出身である松本輝殷が棟梁として工事を請け負っています。また、当時の山梨県第5代県令藤村紫朗の熱心な教育普及の活動により、睦沢学校をはじめとした独特の擬洋風建築を生み出し、それらを藤村紫朗の名にちなみ、藤村式建築と呼んでいます。

 

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 この建物の形は左右対称の構成で中央に塔を戴く形で、学校や庁舎などの擬洋風建築に多く見られる形です。中央の塔屋は太鼓楼と呼ばれています。

 

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 玄関前の車寄せやベランダ、黒塗りのアーチを持つ窓枠といった洋風の特徴を見ることができます。

 

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  しかし、桟瓦、ベランダの雲形のような曲線を持つ幕板は日本建築的であり、柱の上下端の丸みを帯びるように削られた姿は建長寺などに代表される禅宗様建築の特徴であるちまきを思い起こさせます。また、ベランダの軒天井は菱組の透かし打天井となっています。

 

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再現された当時の教室の様子。

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ベランダから甲府駅方向をみる。

 現在、甲府駅北口広場の北側には山梨県立図書館、その東側には山梨文化会館があります。山梨の明治、昭和、平成を代表する建築を概観することができ、その風景には感慨深さを感じます。

 

甲府市藤村記念館

山梨県甲府市北口2-2-1(甲府市北口広場)

 

開館時間:午前9時〜午後5時

休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始

入館料:無料