仙台市博物館
10月も間近に迫ったとある日。汗ばむ暑さの中、柔らかな日差しに秋を感じつつ、仙台の街を仙台城址へと続く道を進むと広瀬川にかかる大橋が。歩みを進めると小さな沼地が姿を現します。五色沼と呼ばれるその沼はフィギュアスケートの発祥の地なのだとか。
その沼から左手に曲がると、道の両側には仙台城の石垣が人の上背よりも高くそびえます。鼻を打つ金木犀の香りを感じながら、石垣をぬけると目的地の仙台市博物館が見えてきます。
全体は石貼りで被膜され、全体的に重厚感が在り、右側のボリュームは開口部も少なく鈍重でも在り、角が鋭角となっているためどこかシャープな印象を受けます。又、左のボリュームはエントランスとなっており、1階、2階とガラス張り、太い柱と梁による構成は神殿のよう。深い軒出による影、周囲の風景を移す窓ガラスによる厳かさは文化施設の持つ重厚感をさらに高めている様に感じられ、背筋か伸びる様な心持がしました。
エントランスは吹き抜けになっており、奥には展示空間へと誘う階段室。そこは、石貼りとなった壁に天窓からスリットによって表情づけられた光が降り注ぐ、まるで神殿のような空間となっていました。
いざ展示空間へと歩みを進めると、中央に通路が走り、その脇に展示室が取り付いています。この「ストリート空間」では、休憩用のベンチでは小学生たちが会話を繰り広げ、婦人の方々は談笑しながら気ままに「ストリート」を歩いています。「ストリート空間」に取り付く展示室の入れ口は各々テーマに沿ったデザインのよって街路的な演出がなされ、天井には天窓が取り付けられ、光が柔らかく降り注ぎます。その光景はいつの日か写真で眺めた中東のバザールを彷彿とさせます。
順路を大方決め、半ば強制的に「見せる」博物館ではなく、利用者の「見る」という主体性を重要視したプランの博物館となっています。